和田勉さん「天城越え」
今月80歳でお亡くなりになった元NHKの看板演出家、和田勉さんの「天城越え」を見ました。和田勉さんは「テレビはアップだ」という演出論の持ち主だったそうで、それだけにアップ映像の迫力は鬼気迫るものがありました。大正時代のある日、天城山を超えようとし、偶然出会ってしまった少年、娼婦、土工3人の間で起きた悲劇を描いたドラマです。1分以上あると思われる、セリフのない、表情だけのアップも沢山あります。そこに少年(鶴見 辰吾さん)の娼婦に対する淡い恋慕や、土工に対してふつふつと沸いてくる怒り、娼婦を演じた大谷直子さんのそそるような色っぽさと力強さ、土工を演じた佐藤慶さんの深く暗い絶望の表情…など画面にくぎ付けになりました。雄弁なアップばかりです。テレビ番組をつくる時、退屈にならないよう、カットを短く、テンポよく、情報量を多く-となりがちですが、アップが持つ力というのを改めて見せつけられました。30年以上前につくられたドラマですが、今見てもとても新鮮です。
「大人女子のアニメタイム‐川面を滑る風」でも、アップを多用しています。ゆっくりと、主人公の物語に入っていけるような映像づくりを目指しました。
NHKのオンデマンドでご覧になれます。
http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2010024562SA000/
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