母と娘、支配と解放
最近、母親と娘をテーマにした作品を2つ読みました。1つは昨年亡くなられた佐野洋子さんが実の母親とのことを描いた「シズコさん」、もう1つは角田光代さんの短編集「マザコン」に収められている「パセリと温泉」という小説。どちらも、強烈で大嫌いだった母親が呆けて、つきものが落ちたように穏やかな人になってしまった状況に接した娘の心情が描かれています。佐野さんは母親の手を触ったこともなく、自分は愛されていないと思っていたそうです。でも呆けた母親が、佐野さんに暖かい気持ちを向けるようになったことで、嫌悪感が「氷山にお湯をぶっかけたようにとけ」、許し、許された感覚を得たことが、ほとばしるような文章で描かれています。一方、角田さんの小説の主人公は、いきなりいい人になってしまった母親にくすぶるような怒りを感じます。ネガティブ思考の母親の影響を受けた自分が置いてけけぼりにされたような怒り…。どちらの感覚も実感を伴って伝わってきます。実は私の母親も認知が進み、私が知る母とはちょっと違う人になったように感じることがあります。その変化に対して、佐野さんや角田さんが書いているように感情の焦点を合わせてはいませんが、この2つの作品を読んだことで、来たるべき状況に対して心構えのようなものが少しできたように感じます。誰もが通る道なんだなぁと。(PS「シズコさん」のステキな装丁、行方不明、残念…)
大人女子のアニメタイムはNHKオンデマンドでご覧になれます。
http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2010024562SA000/
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